2012年の臨時、緊急往診の状況
(2013年 在宅医療学会抄録より)

当クリニックにおける往診の現況
 
榎会 千城台クリニック    柿澤 公孝  光永 伸一郎  柴崎 和巳
 
【背景・目的】人口高齢化に伴い在宅診療においても多くの高齢者を抱える傾向にある。
また地域の拠点病院においても在院日数調整やベッド不足もあり在宅診療に移行する患者の重症化が進んでいる。
今回、当クリニックにおける2012年(1月〜12月)の往診を調査、検討したので報告する。
【方法】2012年に訪問診療を行った全240名の年齢、性別、主病名、介護度、往診回数、
往診時の主訴、診断、診療内容につき調査を行った。
往診の定義は患者、家族および介護者、訪問看護師、ケアマネージャー等からの訪問依頼
により定期訪問以外に行った訪問診療とした。

【結果】診療患者の内訳は男102名、女138名、年齢は39-102歳、平均80.74歳
主病名は認知症・精神科疾患が62名、廃用症候群・筋力低下57名、脳血管障害(後遺症)
が53名、悪性腫瘍、36名、神経難病18名、その他14名であった。
介護保険認定は要支援1(2名)、支援2(4名)、要介護1(22名)、介護2(42名)、
介護3(49名)、介護4(50名)、介護5(62名)、介護保険なし(7名)、不明(2名)であった。
1年間ののべ往診数は325件、主訴は発熱が86件と最も多く、次いで呼吸器症状(痰がらみ、咳嗽、呼吸困難感)
が50件、消化器症状(下痢、嘔吐、腹痛)が36件などであった。
診断名は呼吸器感染症が58件と最も多く、脱水症21件、尿路感染症13件などであった。
診療内容は気管吸引、カテーテルの修正、外科的処置などの処置を行ったケースが30件、
点滴や注射を行ったものが123件、薬剤処方のみのもの64件、検査のみ5件、
指導および経過観察25件、病院紹介・入院20件、死亡確認58件であった。
【考察】当クリニックは訪問看護をファーストコールと限定せず直接コールを受け入れる、
原則として往診を断らない方針を採っているため往診回数は少なくない。
高齢者が多く感染症、経口摂取困難により脱水となるケースが多いため点滴や注射の処置が
多いという特徴がみられる。
年間の往診回数の多い患者の検討では常勤看護師のいないグループホーム入居者、
介護者の不安が強いケース、カテーテルトラブルの多いケース、
誤嚥を繰り返すケースなどがみられた。